前回より続いて、第8章、第9章、そして第10章を読み終えた。
現在の人類社会における不平等(今風の言葉を使うなら、格差)の起源である食料生産の開始時期の地域差はいかにして生じたのか。第8章では農作物の裁培化について、第9章では大型哺乳類の家畜化について、それぞれ地域差となった要因を解明することで、その問いに答える。さらに第10章では、裁培化・家畜化された動植物が各地に伝播する速度に差があり、その速度差が大陸による格差を広げたのだと補足する。
裁培化も家畜化も早期にそれを成功できたのは、それを実施した人々が(他の地域の住民よりも)優れていたからではなく、そこに生育していた植物や動物がたまたま裁培化、家畜化に適した遺伝的特徴を持っていたから。また、こうした技術は単純なものから複雑なものへと一歩、一歩発展するものだ。最初の簡単なステップに成功しなければ、より複雑な(たいていは困難な)技術を開発・確立することはできない。このため、最初に運良く成功できた者だけが更に発展するサイクルを開始することができた。
こうした相違をあげたのは、世界各地で広く裁培されている農作物を称賛するためではない。初期のユーラシアの農民が、他の大陸の住民よりも創意工夫に優れていたことを証明するためでもない。こうした相違は、アメリカ大陸やアフリカ大陸が南北に長い陸地であるのに対し、ユーラシア大陸が東西に長い大陸であることの反映といえる。そして人類の歴史の運命は、このちがいを軸に展開していったのである。
(p.286)
第2部の終わりとなる第10章は、こうしめくくられている。つまりはすべて偶然の結果によるもの。「持てるもの」と「持たざるもの」の違いは遠い過去のちょっとした運の差で決まってしまったのだ。
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