2008-12-20

10歳になったGoogle ([著]Googlerたち, [版]Official Google Blog) #9

Ad perfect -- Posted by Susan Wojcicki, VP, Product Management (9/12/2008)

Google's advertising business was founded on the core principle that advertising should deliver the right information to the right person at the right time.

広告はウザい。何よりもまずそう思うのはなぜだろう? おそらくそれは、ヒトがインターネットにつながる以前の世界での広告の供給のされ方に問題があったのだ。その基盤となった技術の未熟さが、広告を有益さよりもわずらわしさが目立つ情報にしてしまった。その配布に対する方法論が稚拙だったことが、広告をほぼ確実にムダなだけの情報にしてしまった。

「正しい時に、正しい人に、正しい情報を」、もう少しわかりやすく表現するなら「適切な瞬間に、必要としている人に(だけ)、(本当に)求められている情報を」となるか。これが実現できるなら、広告は有益どころか必須の情報となる。

さらに言う「まだ存在を知らない(けれど実は有益な)何かを知るのに役立つ」と。

ads can help you learn about something you didn’t know you wanted
(・・・中略・・・)
the ad helped me discover something I didn't know existed.

もちろん、インターネットは、コンピュータは、Googleはヒトの心が読めるわけじゃない。その代わりに膨大なデータを使う。わたしやあなたや彼や彼女が、今どこにいて、いつもこの時間なら何をしているか、普段その場所でどんなことをしているのか、今日はどんな日(子どもの誕生日? パートナーとの記念日?)なのか、そんな雑多な個人情報をガサガサ集めて、ゴリゴリ処理して、その望みを(確率的に)割り出す。そして、こう言う「ひょっとして、おいしい和食の店を探していますか?」と。

「広告」の概念を発明した人が誰かは知らないけれど、その発想の大本には3つの "right" があったのかもね。

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2008-12-14

iPhone HACKS! ([著]小山龍介, [版]宝島社) #2

このところ、ライフハック系の本を良く読んでいる。というのも、この類の内容が通勤、とくに朝の通勤で読むのにピッタリだから。気合いが入ったり、モチベーションが上がったり、こうしてみよう、ああもしてみようと前向きな気分になれる。で、そういった本で共通に主張されていることがある。それは「コントロール」。ライフハックとは自分自身を、キャリアを、人生をコントロールすることなのだ。

(p.66)
これは、自分で決めたスケジュールです。自分で自分自身をコントロールする。自分の時間をコントロールする。それは、他人に流されることなく、自分自身のリズムで生きていくということ

とはいえ、自分自身のコントロールは簡単じゃない。世界で一番わがままな自分自身は、自分の言うことすら聞いてくれない(他人の言うことなんて耳も貸さない)。

(p.73)
効率の悪い仕組みの中でがんばるよりも、がんばらなくてもいい仕組みを作る、というのは、まさにハックの真髄です。

言うことを聞いてくれない自分に悩むより、無理に言うことを聞かせようとがんばるより、言うことを聞かざるを得ない仕組みを作れないだろうか。

(p.102)
環境が思考や行動に影響を与えている一例。こういうことを経験すると、思考そのものを無理に変えようとするよりも、環境を変えたほうが簡単だ、ということにも気づきます。 ここにもライフハックの基本コンセプトがあります。それは、「自分を変えるのではなく、環境を変える」ということ。・・・(中略)・・・外部の環境を変えることで、その環境の変化に対応して自分の思考が変化する。この発想で仕事や生活を捉えなおすことが、ライフハックなのです。

ここが大事なところだね。自分を変えるのが難しければ、もっと変えやすい環境を変える。たとえば、TV を見ることが自分自身のコントロールを失わせているというなら、(あくまでも「例え」だゾ)、TV を捨てる(売ってしまう)というような「環境の変化」を起こしてしまう。無いものは見れないからね。完全に排除してしまうのが不安なら、普段はコンセントを抜いておく、とかね。

結果が出さえすれば良いんだよ。自分自身をコントロールすることが目的だからといって、自分の変化にこだわらなくても良い。ヒトは独立してただ自身だけで存在しているわけじゃない。取り巻く環境との関係も自分のあり方のひとつの面だ。環境を変えることで、好むと好まざるとに関係なく、行動が変わる。そんな変化の起こし方もある。ちょっと「目からウロコが落ちる」気分だわ。(`・ω・´)

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2008-12-12

第28回 不在問題 ([著]増井俊之, [版]WIRED VISION BLOGS)

増井俊之の「界面潮流」: 第28回 不在問題

私が運営している本棚.orgQuickMLなどのサービスは、ユーザIDもパスワードも登録せずに利用することができるようになっているのですが、ユーザやパスワードの登録が要らないことに気付いて喜んだ人はほとんどいないようです。ユーザの個人的な情報を扱うシステムなのにパスワードを使わずに利用できるということは大きなメリットがあると考えているので、私は自分のサービスでは極力ユーザIDやパスワードを利用しないようにしているのですが、「パスワードを利用しない」ということの利点はなかなか理解してもらえないようです。

「パスワードを利用しない」っていうか、特定の個人に結びついたデータを本人をふくめて不特定の人々が更新できる、という状態だよね。一般的には受け入れがたい状況なのだけど、場合によってはこれが受容可能なこともあるんじゃないか?

もちろん、いわゆる個人情報を勝手に書き換えられるのは困るし、なりすまされるのも問題だ。けれど、わざわざ他人にひもづいたものを書き換えようと思わない(あるいは書き換えることで得られる「何か」が手間に見合わない)、そんな情報はないのだろうか?

ひょっとしたら、「誰でも書き換えられる」方が積極的に喜ばれることもあるかも。「本棚」や「ML」がそうなのかはわからないけど。ああ、やっぱりそういう状況はちょっと想像できないな。

とはいえ、いつだって想像力不足っていう可能性はある。だとしたら、そこにイノベーションの可能性もある。発明おじさんはそういうことを言いたいのかしら(・ω・)?

そうそう、Wiki はちょっと違うよね。そもそもの Wiki は特定の個人に結びついていない情報(つまりみんなの共有情報だ)を誰もが編集できるっていうものだから。ま、運用次第ではあるけど。

携帯の乗換案内を、もっと素早く。([著]井上 陸, [版]Google Japan Blog)

Google Japan Blog: 携帯の乗換案内を、もっと素早く。

Google モバイルの検索ボックスには欲しい情報をすぐに見つけられるよういろいろ工夫がしてありますが・・・(中略)・・・

  • 「渋谷から六本木」:これが基本的な使い方です。現在を出発時刻にして検索されます。
  • 「六本木から横浜 終電」:急いで終電を探すときも、これで一発です。
  • 「渋谷から六本木 1830」:これで、午後6時30分に六本木に到着する経路を検索できます。
  • 「渋谷 六本木」:スペースで区切って使うこともできます。

正体はただの単純なアルゴリズム。実体はただの条件分岐。けれど、ヒトはこういうところに「賢さ」を読み取る。本来、「便利」==「賢い」ではないのだけれど、今までのコンピュータの不便さへの不満の反動がそう思わせる。

結局、ヒトと同じように思考する機械を作ることはできないのかもしれない。その代わり、膨大なデータを背景に動く(比較的)単純なアルゴリズムが「賢さを演出する」ようになるかも。ヒトのような能動的に外界と対話する知性ではなく、受動的だけれども問題解決に特化した「賢さ」。ヒトの問いかけにヒト以上の賢明さで答えを編み出す。そんな機械ならもうすぐそこに見えているのかも。

演出された賢さはチューリングテストをパスしないだろう。けれど、便利ならそれで良いよな。チューリングテストをパスするような機械にヒトは好感を抱かない。

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2008-12-05

10歳になったGoogle ([著]Googlerたち, [版]Official Google Blog) #8

The future of mobile -- Posted by Andy Rubin, Engineering Director (9/19/2008)

Your phone is like your trusted valet: it knows a lot about you, and won't disclose an iota of it without your OK.

ひとつ前の The intelligent cloud を補完するような内容。というか、そのより具体的な姿、ありうべきビジョンというところ。モバイル(指先に触れるモノ)だけでは実現できない。クラウド (ネットの向こう側)だけでも実現できない。けれど、この両方を合わせるとそこに未来が見えてくる。

毎日、毎週の時間割を決める。iCalに入力する。リマインダをかける。やるべきこと、やりたいことを洗い出す。RTMに入力する。日時を特定できるものはリマインダをかける(メールを飛ばす)。大事なことはリマインダをかけること。朝、起きる時間を「目覚し時計」に任せるように、日常の行動のトリガーを「システム」に任せてしまう。リマインダをうまく使えば、適切な時間に「システム」が今何をすべきなのかを教えてくれる。頭の中から追い出しておくことができる。感覚としては秘書が付いているようなもの。

ただし、今の「システム」(たとえば iPhone + ネットの向こう側のサービス)は、ヒトの秘書のように自分の代わりに予定を立てたりはしてくれない。自分で立てた予定をひとつひとつ入力しておかなければならない。Googleは言う、「近いうちに、そんなメンドウなことをしなくても良くなるよ」と。

ネット(cloud)上に保管されたメールを始めとする個人データを検索し、予定だと思われる日時を拾い出しリマインドしてくれる(「明日はパートナーの誕生日ですよ」)。今いる場所を割り出して、何をすべきかを教えてくれる(「ほら、そこのコンビニで牛乳を買っていかないと」)。

うんうん、それも良いかもね。あれこれ指図されると思うと、うっとおしい気もするけれど、代わりに覚えておいてくれて、適当な時と場所で思い出させてくれると考えれば、楽で良いよ。もっとも、あんまり甘やかされるのも問題かもな。