2008-06-04

アラル海 消失の教訓 ([著]P.ミックリン/N.V.アラジン, [収]日経サイエンス 2008年7月号)

食事をしながらTVを眺めていて巨大な湖が消えたとかいうVTRを見た。その湖の名前がアラル海。2つの川から流れる水がたまってできた内陸の(つまり海とはつながっていない)湖だ。この湖が過去40年以上にわたり水量が減りつづけ、どんどん縮小していると言う。どこかで聞いた、っていうか最近どこかで見た(読んだってほどじゃない)ような・・・。おそらくはサイエンス。で、そこら辺を探して記事を見つけた。

この湖が干上がり始めた原因は、ソ連時代に行われた大規模な灌漑事業。要は、綿花や米などの作物を作るために前述の2本の川の水を途中で使ってしまった、ということ。それもとんでもない規模で。いったいどれだけの綿をつくったんだ?

(p.96)
ソビエト連邦はアラル海の瀕死状態を何十年も隠し続けたが、1985年にゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)書記長が環境と人類に関するこの重大な悲劇をようやく明らかにした。

湖、それも世界第4位の大きさだったものが消えていくのを隠し続けたって、そんなことができるのか・・・。いやまあ、よその国の奥で起きていることは見えないかもね。

うん? でも、今なら Google Earth があるゾ。誰でも見られるんじゃないか?

早速、Google Earth で見てみた。

カスピ海の近くだということで探してみると、地球儀状態からでもすぐに見つかった。どんどんアップにしていくとそれらしい湖が見えてきた。おや、そんなに小さくない。っていうかサイエンスの2007年だとなっている写真よりずっと水が多い。むしろ1997年に近いんだけど (・ω・)?

UNEP」というアイコンがあったのでクリックしてみる。「ATLAS OF OUR CHANGING ENVIRONMENT」と題したウィンドウがポップアップする。英文の解説はサイエンスの記事に書いてあるようなこと。で、"Overlay images on the Earth surface" というリンクをクリックしてみる。レイヤが追加されて、1973、1986、1999、2004-09-22、2006ー09ー09の5つのアラル海の(過去の)姿を重ねて表示することができるようになった。全部重ねた上で、過去から順に非表示にしていくと何が起こったかが一目瞭然。かつては琵琶湖100個分だった湖(海)が消えていく過程がわかる。

たしかに Google Earth で、10年前なら見えなかったような場所まで、誰でも手軽に見られるようになった。けど、これってある時点のスナップショット(それもツギハギ)なんだよね。この先、5年、10年と Google Earth が地球の画像データを蓄えていったとしたら、そのうち、過去の地球の姿を見ることができるようになるだろうか? 自分の済んでいる街の過去と現在を重ねて見たりできるようになるかな? 100年、1000年と人類の文明(と Google)が続いたら、その間の地球の変化を動画のように見ることができるだろうか?

話をサイエンスの記事にもどそう。

湖が縮小するにつれ、生態系がぶっこわれた。魚が減り、鳥が減り、哺乳動物も減った。周辺地域では砂漠化が進み、住人の健康も害されていった。綿を作るために犠牲となったわけだ。

(p.102)
アラル海の枯渇は40年以上にわたって続いてきた出来事だ。持続可能で長期的な解決方法には、大規模な投資と技術革新だけでなく、政治的・社会的・経済的な大改革が必要になる。

良く言われることだけれど、環境を壊すのは簡単で戻すのは難しい。だから壊さないようにしましょう、これまで小学校や中学校ではそう教わってきた。壊れたものを戻すように努力しましょう、とは言われなかった。壊れたものをどうするのか、そこは触れられてこなかった。

持続可能な世界を目指す現代では事情が異なる。壊さないようにすることはもちろん、壊れたものも修復しなければならない。そして、あきらめて放り出したりしなければ希望はある。そのあたりも記事から引用しておこう。

(p.103)
アラル海の物語は、現代技術社会が自然界とそこに暮らす人々を破滅に導く途方もない力とともに、環境を修復する大きな潜在力を持っていることも実証している。

(p.103)
自然環境は驚くほどの回復力を持っているので、希望を捨てたり環境保護の努力を怠ったりしないこと。多くの評論家がアラル海はもうだめだと見限ったが、実際にはかなりの部分が生態的に回復しつつある。

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