「序章 理性の限界とは何か」と「第一章 選択の限界」を読んだ。序章を読んでいるときはそれほどおもしろそうには思わなかった。第一章を読んで印象が変わった。いやあ、オモシロイ。
アロウの不可能性定理(Wikipediaでの表記はアロー)っていうのは初めて知ったのだけど、これが何ともおもしろい。民主主義っていうか、選挙に代表されるような投票という行為をモデル化し、「おいおい、お前らが大事にしている民主主義って、実は不可能なんだぜ」ってことを証明してしまった、とか。それでノーベル賞(経済学)を受賞した、とか。
もちろん、不可能なのはモデル化された民主主義(それも完全民主主義っていうらしい)であって、実在の制度やら何やらに不備があるとかどうとうか、そういうことではない。まあ、第一章を読んでいると、不備だらけだろっ、って思えるけど。
オモシロイのは民主主義が不可能だとかそういうことではなくて、民主主義なんていう数学(や科学)とはおよそかけ離れたところにありそうなモノが、少数の条件(この本では 2 + 4 で 6つの条件が挙げられている)でモデル化できるってこと。この定理の存在を知ることができただけでも、この本を買って読んだ(まだ 1/3 だけど)価値がある。
序章では、人間の理性(哲学系らしいからねえ、科学系ならヒトの知能とか知性って表現するだろうけど)に対して 3 つの限界を提示している。すなわち「選択の限界」「科学の限界」「知識の限界」。このうち「選択の限界」に当たるのがアロウの不可能性定理だ。残りの 2 つは、それぞれ「ハイゼンベルクの不確定性原理」と「ゲーデルの不完全性定理」。サブタイトルにある 3 つの「不*性」がここに現れる。